(1) 設備保守の委託状況
マンションに設置される各種設備の保守・点検に係る業務は、管理業者に全般の委託を行っていない管理組合でも、各設備ごとに専門の設備保守業者に委託することが行われており、その業務を行うにも専門知識が必要なものが多く、国家資格の取得が必要となっているものもある。
マンションに設置される設備としては、エレベーター、自動ドア、機械式駐車場装置、宅配ボックス、給水ポンプ、洗浄槽、配電盤、自動火災報知器などがある。
その中で、エレベーター、自動ドア、機械式駐車場装置、宅配ボックス、給水ポンプの5設備について、主要メーター系保守業者の競争状況を調査したところ、その特徴として、①設備保守に占めるシェアが概して高い②自社系列以外の設備の設備保守は、ほとんど行っていない③設備保守料金は独立系保守業者より概して高いという特徴がみられている。特に、昇降機(エレベーター)などの保守に関しては、製作メーカーによって部品が異なることなどから、一般にメーカーや系列のサービス会社が点検を行っているのが現状である。
(2) 設備保守業者変更に伴う障害
公正取引委員会のアンケート調査は、管理業者と同じように設備保守業者についても、変更に関する調査を行っており、「変更したことがある」が3割となっており、それに「変更を検討中である」及び「変更を過去に検討したことがある」を加えると、半数以上の管理組合が設備保守業者の変更を検討している。しかし、同調査によると、設備保守業者の変更を検討した管理組合の3割が、設備保守業者を変更する際に障害があったとしており、中でもエレベーターと機械式駐車場装置については、既存の設備保守業者の行為が障害となったとする報告がなされている。
(3)長期修繕計画
マンションの計画修繕工事の実施には多額の費用を要するが、その実施時に必要な費用を一度に徴収すると、区分所有者の負担能力を超えて必要な費用が徴収できず、計画修繕工事が実施できなくなることが想定される。このような事態を避けるためには、長期修繕計画を作成し、これに基づいて必要な費用を修繕積立金としてあらかじめ積立ておくことが必要である。しかし、現状は、計画期間の不足、推定修繕工事項目の漏れなど不充分な内容の長期修繕計画が見受けられ、そのために積立てる修繕積立金の額が充分でなく、計画修繕工事の実施時に、その費用に充当する修繕積立金が不足する原因となっている。
又、長期修繕計画は、次に掲げる不確定な事項を含んでいるので、5年程度ごとに(大規模修繕工事と大規模修繕工事の中間の時期に調査・診断を行い、その結果に基づいて、又は大規模修繕工事の直前に基本計画の検討に併せて、若しくは、大規模工事の直後にその結果を踏まえて)見直すことが必要である。当然ながら併せて修繕積立金の額も見直す必要がある。
① 建物及び設備の劣化の状況
② 社会的環境及び生活様式の変化
③ 新たな材料、工法等の開発及びそれによる修繕周期、単価等変動
④ 修繕積立金の運用益、借入金の金利、物価、消費税率等の変動
長期修繕計画の見直しは、理事会、専門委員会等で検討を行ったのち、専門家に依頼して調査・診断を行い、その結果に基づいて検討を重ね、長期修繕計画と修繕積立金の額の見直し案を作成し、総会に諮ることとなる。(標準管理規約条項)
(4)大規模修繕工事
分譲マンションの経年化に伴う劣化、老朽化対策として一定周期ごとに計画的な大規模修繕を行うことは、マンションを経済的に長持ちさせる為にも必要不可欠とされている。この実施については、管理業者の企画能力が必然的に求められることになる。大規模修繕工事の実施割合は次のとおりである。
① 外壁塗装90.3%
② 鉄部塗装82.9%
③ 廊下・バルコニー防水81.7%
④ 屋上防水78.9%
⑤ タイル補修63.7%
大規模修繕工事を実施するにあたって組織体制については、通常理事会の諮問機関として専門委員会の設置等により検討を進めることが多い、実施時期については、建物関係では、概ね10~15年で実施している。大規模修繕工事実施における工事費用と調達方法では、規模別にみると、全般的に修繕積立金の占める割合が多いが、戸数が少なくなるにつれて一時金徴収や借入金の占める割合が増える傾向にある。
(5)耐震診断・耐震改修の実施状況
旧耐震基準に基づき建設されたマンション(旧耐震基準で建設されたマンションが106万戸)のうち耐震診断を行った管理組合が33.2%、行っていない管理組合58.0%である。耐震診断を実施したもののうち「耐震性がないと判断された」割合は32.6%であり、このうち耐震改修工事を「実施した」が33.3%、「まだ実施していないが今後実施する予定」が47.6%、「実施する予定はない」が19.0%となっている。耐震診断が進まない要因の一つに、マンション管理組合内での合意形成の難しさがあり、耐震診断で万一悪い結果が出たら、改修の費用をどうするか、あるいは資産価値が下がって売れにくくなるといった声も多く、耐震診断の合意形成までに1年くらいかかるケースもあると言う。
(6)建替えの検討状態及び建替えの必要性等
建築後30年以上の老朽化マンションは約130万戸で建替えの方向での具体的な議論の状況は、建替えに向けて「一定の方向性は決定したが、建替えは決定していない(検討継続中)」が36.4%、「建替えを目指して検討しているが、管理組合の方向性を決定するには至っていない(検討継続中)」が13.6%と、半数が検討中となっている。
建替えを円滑に実施して行く上での問題としては、「建替え資金の調達が困難な区分所有者がいる」が40.9%と最も多く、次いで「現在のマンションに愛着があり建替えに反対する区分所有者がいる」が36.4%、「仮居住の確保が困難な区分所有者がいる」が31.8%となっている。
区分所有者の建替えの必要性に対する考えについては、「建物が相当老朽化又は陳腐化しているので立替えが必要である」が4.9%となっている。一方、「建物が相当老朽化又は陳腐化しているが、修繕工事又は改修工事さえしっかり実施すれば建替えは必要ない」が30.0%、「建物は老朽化も陳腐化もしていないため、今のところ建替えは必要ない」が64.0%となっている。
平成26年6月現在、過去に建替えが行われたマンションは実施中を含め全国で202件しかなく、うち、阪神・淡路大震災での倒壊マンションや平成17年11月の構造計算書偽装問題の発覚による建替えを除けば、「一部の条件の良いマンション」の建替えにほぼ限定される。(マンション建替え法による建替えは77件)このような条件の良いマンションの条件の事例は次のとおりです。
① 都心近郊の交通の便が良い
② 建替え前より総専有面積が増える
③ 建替え反対者が少ない
④ 旧区分所有者の金銭負担がない